灰夢

静と動の幸福は
互いに妬み苦しみ憧れて

過ぎたる識は
その欲望を解放し
魂を天へと連れ行く

甘美な香りは
微睡む瞳を混沌へと誘い

冷たい闇の底で
束の間の安らぎが心を犯す

諦観の果てに思考は消え去り
白く不気味な空間だけが
ただ 纏わり付いて離れない

定まりのない不安定な境界線上で
白でもあり 黒でもある猫が
こちらを向いて遠ざかる

始まりへと巻き戻される間際
別れを告げる鳴き声が
「にゃ~ん」と響いて目が覚めた